星と海と不安定な私と、
昔から好きなものがある。
冬の夜空、それも星がキラキラと輝く澄んだ空。
昔から大嫌いなものがある。
夏の海、プールなどの水がある場所。
もしかしたらそれらはこれから先の人生で変わって、海が好きになるかもしれないし、逆に星が嫌いになるかもしれない。
だけど今のこの不安定でグラグラ揺れる私の好きと嫌いを結びつけてくれたのは
サカナクションだった。
子供の時、夜はあまり好きではなかった。母が夜の仕事をしていたために、家にいなかったから。もちろん家族はいたし、それなりに騒がしい家庭だったので、孤独ではない。けれどずっとどこかに何かが足りない気分でいた。
いつのことかは覚えていないけど、当時の家のベランダから星がきれいに見えたことにふと気づいた。でもあれは確かに寒い冬だった。星は静かに私の寂しさを隠すように照らしていた。
今思えばそんなことはただ夜空の星を見ただけの情景に過ぎないし、星だってわざわざ私だけを照らすために輝いているわけじゃない。なのに当時はびっくりするほど寂しさは消えてわくわくする気持ちが私を支配した感覚だった。
今でも星座の形や、星に詳しいわけじゃない。ただ、見ていることが好きなだけだ。
私の生まれた時からのコンプレックス。天然パーマであること。
幼い頃の写真を見てもどれもこれもくるくるした頭で、嫌だった。なにより家族としては存在していることに異議はないが、私に数々のトラウマを植えつけた父親からの遺伝というのが許せなかった。
小学校ではそれだけでずっとからかわれ続けた。負けないように必死に戦ってはみたけど、髪は気持ちでどうにかなるものではない。なによりどれだけ頑張って家でマシにしても、時間が経てばひどくなる。特にプールの時間の後は何もしないで時間が経った時以上にひどくごわごわと毛の1本1本が縮れるのだった。
ずっと母は私がそれをコンプレックスだとわかっていて、卒業式の前に縮毛矯正をかけてくれるよう美容室にお願いしてくれた。結果としては数日で戻ってしまうものの、それから数年は母のお金で矯正をかけさせてくれた。今は自分で払って好きなタイミングでかけられるし、ヘアアイロンもあるから昔よりかは今の自分が好きではある。
ただやはりクセが強く出ている時期はどうしたってやってくる。なにせ元のうねり具合がすごいから。そういう時期は余計に水を嫌う。だからこそ夏の水辺は嫌いなのだ。
そういう寂しさも、自分へのコンプレックスも、忘れさせてくれたのはテレビだった。
ある時テレビから気になる歌声が流れた。
気づいたら覚えるメロディー。当時の私には稲妻以上の衝撃が走った。深く深く調べれば調べるほど知ってる曲、たくさんあったのに今まで気にも止めていなかったんだなと感じた。
サカナクションは今やメジャーデビュー10年以上になる誰もが知ってるバンドだ。
「新宝島」などは時々ネタにも使われる程だし、ライブがすごいことでも有名な音の変態バンドと言っても過言ではない。
でも別に私はサカナクションが好きでずっと追いかけているわけではない。
ただ私の心情や感情に名前がつけられない何かを上手く歌詞にして、音楽にしている彼らの音が好きなのだ。
そういうわけで、この作品を見た。
実は今回の場所とは違うところで以前上映していたのも見ていて、リバイバル上映とは知らずに今回も見てきた。前とは違った感情や視点で見れたので、結果的にはよかったからいっか。
※ちょっと上からな感じがするので、あんまり感想とか述べたくはないんですが、今回書きたいことのために必要なので書かせていただきます。
vo.の山口さんは北海道出身なだけあって、すごく都会の感覚を歌詞に表現するのがきれい。「モノクロトウキョー」とかは特に聴いててまさしくってくらいに。
それ以外にも人と人との関係や、自分自身と問答する迷路のような感覚を表現する的確な言葉を山口さんは持っている。羨ましくてたまりません。
例えば、「仮面の街」や「エンドレス」は聴いていて苦しくて吐き出したくなるほど悲しいのに納得してしまう。「アイデンティティ」や「アルクアラウンド」で自分自身を探しては知らない世界を学びたくてたまらなくて。
その時の感情や、悩み、体調によっては救われるものもあれば、苦しめられるものもある。サカナクションのそういう音楽が私は好きなのだ。
プラネタリウムでは海と東京の空と星の話が出てくる。
東京は、星がないわけではない。ただ、ビルがびっしりそびえ、街灯や車の明かりは絶えることはないあの街では星の輝きなどロウソクの灯りより乏しいものなのだ。
「ユリイカ」はそういう感覚を表現していて、寒気がするほどそれはそれは東京なのだ。そういう「東京」を感じる程に海の中にでもいいから倒れたくてたまらなくなる。「ルーキー」のMVのように。
東京で勤めて1年も経っていないが、私は心がオーバーヒートした。
元々常に不安な感情と共に生活をするようなネガティブ思考人間なのもあって、いろんなことが積み重なって心が限界を訴えた。
他の人にできることが、自分にはできないのだと、悲しくて仕方がなかった。
できない悔しさをバネにできる人のことをすごく尊敬するし、見習いたいと思う。けれどいつもそれがおかしな方向に振り切れて、結果として自分の内面を傷つけることでしかどうにかすることのできない虚しさ。このままでは延々ループしてしまうのが目に見えている。自分でもそれは危険だと思い、人の力を借りながら少しずつ変えられるようにしていきたい。不安定な私を抜け出したい。そう思って今少しずつ頑張って進んで。
「さよならはエモーション」が発表されたときから苦しかった私の心を支えてくれた。
今でも時々落ち込みたくてたまらない時もあるけれど、
「ヨルヲヌケ アスヲシル」
その時が来るのを待ってプラネタリウムを見終えた。
今でも星は好きだし、海は嫌いだけど、
繋いでくれたサカナクションの楽曲をこれからも応援したい。